製鉄実験の機会があったので行ってきました。
まず、炉を作ります。
レンガを積んでコンクリートブロックで囲み、隙間を漆喰で埋めます。
中はこんな感じ。紙や薪で火をつけて、炭を投入していきます。
外から見たところ。パイプで空気を送り込み、ガンガン燃やします。
火が登ってきました。このまま、炉を高温にします。
その間に砂鉄の準備。
磁石をビニールに包んでから砂鉄をつけ、別の器に入れます。
これを何度も繰り返すことで、ある程度、砂と鉄を分離することができます。この延々と続く手作業が地味で大変でした。会場はバーベキュー場で、周りは皆レジャー客なんです。芋煮や焼き肉を頬張る人たちを横目にみんなでほか弁を食べ、延々と火を燃やし砂をいじっているだけの私たちは、かなり怪しかったはず。
そうこうしているうちに砂の選別は進んでいきます。
これが第1段階。どこからかとってきた、鉄混じりの砂。
第4段階。選別を4回かけて純度を高くした砂鉄。
比較すると、鉄だけの方は粒が小さくさらさらして、綺麗な黒色です。
この砂鉄を高温の炉に少しずつパラパラと蒔いていきます。
火の上に直接振りかけます。中の温度を測ると1200度くらいでした。
製鉄は、砂鉄が溶けて固まるのではありません。砂鉄には酸素が含まれているのですが、これに一酸化炭素をぶつけて酸素を奪い取り、還元作用を起こすんです。
それから2,3時間後…。
炭はほとんど燃え尽きてしまいました。
炉を崩し、水をかけて冷やします。
この時に大量の煙が立ち上るのですが、硫黄の匂いがします。砂鉄に含まれていたものだそうです。
レンガも熱々に焼けてます。
下の方に積んでいたものはもう溶けちゃってます。
この炭の山を、バールのようなもので引っかき回して、
磁石がくっ付いたらそれは鉄です(正方形のものが磁石です)。
これを水で洗って…。
じゃんっ。これが完成した鉄です。
用意した砂が30キロ。それを選別した後の砂鉄が5キロ。
木炭が100キロ。人手、15人分。
それだけかけて、ようやく両手で掬えるくらいの鉄が完成します。
そして残るのは大量のゴミ……。
鉄鋼産業が自然をどんどん破壊していくという事実を、知識としてはもっていたものの、こうして体験してみると本当に身をもって納得することができます。
けれどそれよりも、炭の中から鉄がでてきた時の嬉しさは格別です。古代の人たちも、きっとそうだったんだと思います。山ひとつなくなろうと、鉄を、金属を作りたかった。映画「もののけ姫」で山神さまが怒ったのも理解できますが、どんなに犠牲を払っても産業を推し進めていく人間たち、とても逞しいではないですか。けれどこれからは、自然との共存が最優先となるべきでしょう。
物質社会にどっぷり浸かりながらエコだエコだと叫ぶのはやめて、本気出して環境と産業について考えてみようと思います。