2012年、はじまり

一昨年の晩秋、初めて地元福島の山に登った。安達太良山という日本百名山のうちのひとつだ。それはとても素敵な体験で、もっと山のことを知りたくなった。調べると、福島県三春町出身の元祖・山ガールと呼ばれる田部井淳子さんが、「うつくしま百名山」の選定委員長を務めたことが分かった。「うつくしま」というのは長いあいだ福島県のキャッチコピーだった「うつくしま、ふくしま」からきている。ダジャレである。日本百名山に挑戦するのは費用がかかりすぎるだろうから、うつくしま百名山を制覇しよう!と心に決め、その年のうちに3つ登った。レポートするブログを作りたかったので、山開きとともにオープンするつもりでレンタルブログスペースを借りて準備していた。需要はとても少なそうだけれど、山で会う人への名刺代わりにしたかったのだ。

ヘッダはこんなデザインだった。

そのさなか、東日本大震災と原発事故が起こった。

予定はたくさんキャンセルされ、2011年にやりたかったことはほとんど達成できなかった。プログラミングや英語の勉強をしたいと思っていたし、数年前に始めたバドミントンも、もっと上達するはずだった。でも実際のところ、私はWebに張り付きになりニュースや解説を追いかけてばかりいた。全然使っていなかったはてなダイアリーに「福島には原発が必要だった」というエントリを書いて、いただいた大量のコメントに感情を揺らしたり、その時その時で思ったことをTwitterで呟いて日々を過ごした。通っていたバドミントンクラブは、体育館が壊れて使えず長い休みに入ってしまった。

もちろん開くはずだったはずのブログはお蔵入りとなった。「うつくしま」に、まったく逆の「汚染」という言葉が飛び交うようになり、ヘッダの写真を撮った山は、事故からしばらくしてホットスポットだと報道された。

私は住むところを失っていないし、親きょうだいも、当面の仕事も、失わずに済んだ。それは幸運なことだったと思う。けれども何か深いところで何かが永遠に失われてしまったような気が今でもしている。本来の故郷の姿、楽しく過ごすはずだった時間…そうではなくて、失われた物の説明でさえも失われてしまったような、奇妙な喪失。失わずに済んだことで失われた何か。

ともあれ、くよくよしてばかりもいられない。楽しいことをいっぱいしたい。
思いつきで独自ドメインを取得し、WordPressを入れてみた。もっといろんなことをしたい。去年のぶんまで。

2012年がみんなにとって素晴らしい一年になりますように。
雪の残るコンクリートを踏みしめて、願う。